ニュース

活気あふれるスイスのフードテック、アグリテック分野の技術開発エコシステムとは

活気ある農畜産物のハブとして、スイスはフードテックやアグリテックの分野での技術開発に余念がありません。持続可能でより耐久性のある食糧システムの基盤となるツール、製品、サービス、ソリューションなどの開発努力を続けています。

人工知能・視覚・コンピュータシステムを用いることで農地の雑草を検出し、選択的に除草剤を微量散布する植物保護散布機(ARA)を開発するecoRobotix社
人工知能・視覚・コンピュータシステムを用いることで農地の雑草を検出し、選択的に除草剤を微量散布する植物保護散布機(ARA)を開発するecoRobotix社

高品質のチーズやチョコレートで名高いスイスは、世界の農畜産物分野で主要な役割を果たすことが運命づけられているかのように、ネスレ社、カイエ社、 ジヴォダン社などのグローバル企業が統括拠点を構えて活動しています。国の方針としても、スイスは、フードテックのイノベーションを、世界有数の研究機関による確かな技術的ノウハウ、優秀な労働力、新しい概念を持つ消費者、そして、このエコシステムを牽引する企業の活動を活用しながら推進することを掲げています。

スイスには、スイス国内外における食品イノベーションを開発、強化、促進するために発足されたSwiss Food & Nutrition Valleyや、EPFL Integrative Food and Nutrition Center、 HES-SO Institute of Life TechnologiesFood Ecosystem Institute of the University of Applied Sciences of Fribourgなど、世界トップレベルの研究機関が存在します。また、AgriCOAgropôlePhytoArkなどのテクノロジーパークが連なり、食品関連企業が互いに刺激し合いながら技術発展できる環境を提供しています。このようなエコシステムにより、多くの企業がフードテックやアグリテック分野でイノベーションを進め、より持続可能な食糧システムの実現を支えています。食に革命を起こしているスイス企業の例を紹介します。

ecoRobotix
ecoRobotix社は、ヴォー州・イヴェルドン=レ=バンに位置するY-Parcを拠点に、人工知能・視覚・コンピュータシステムを用いることで農地の雑草を検出し、選択的に除草剤を微量散布する植物保護散布機(ARA)を開発しています。カメラと高度な機械学習アルゴリズムにより、ARAは環境規制に遵守しながら、最大で30%の収益向上を見込むなど、迅速な投資回収を実現します。

JNJ Automation 
フリブール州・ロモンに拠点を構えるJNJ Automation社は、チーズの加工・包装用機械の設計製造において世界をリードしています。インダストリー4.0とバイオベース経済の狭間に立つ同社のロボットは、1時間に約120個のチーズを加工し熟成させており、この種の機器を提供する世界でも数少ない企業の一つです。

Luya
Luya Foods社は、肉の模倣をすることなく、豆腐や豆乳製造時の副産物である有機おからから植物由来の代替肉を生産しています。ベルン州に本社を置く同社は、おからを風味豊かな食品として販売するために、伝統的な発酵方法と現代技術を組み合わせた独自の製法を開発し、特許を取得しています。この製法により、添加物や高度に加工されたアイソレートプロテインを使用することなく、100%スイス産のナチュラル&オーガニック製品を提供しています。

Farmer Connect
Farmer Connect社は、コーヒーやココアのサプライチェーンにおけるトレーサビリティ、効率性、持続可能性を向上させる目的で開発されたデジタル化ソリューションを提供するアグリテック企業です。同社のソリューションは、ブロックチェーン、自己主権型アイデンティティや人工知能などの新しい技術を駆使することで、農産物が農生産されて消費者の手に渡るまで、持続可能で効率的な農業を促進しています。

AQUA4D
シエールに位置する Aqua4D社は、土壌の塩分、塩水、バイオフィルム、目詰まり、線虫などを原因とする問題を解決し、水を節約することで持続可能な農業を促進する技術を提供しています。同社の技術は、水中のミネラルや有機物の働きを調整することで、バクテリアの健全性を維持しながら、水中のミネラル溶解度と分布、土壌の保水性、植物によるミネラル吸収率などを向上させることが可能です。化学物質を使用せず、電力消費量も極めて少ないため、環境に配慮したソリューションを提供しています。

CitizenBees
CitizenBees社はヌーシャテル州を拠点とする環境責任型企業で、植物の受粉に不可欠な昆虫であるミツバチの保護目的で、企業や施設の屋根にミツバチの巣箱を設置する都市型養蜂サービスをターンキー方式で提供しています。巣箱に内蔵されたセンサーにより、巣箱内の状況をリアルタイムで監視し、養蜂家や科学者向けに有益なデータを収集することが可能です。

Alver
フリブール州のAlver社は、淡水の底に自生し、タンパク質やミネラル、ビタミンを豊富に含む微細藻類のゴールデンクロレラを基にしたスーパーフードを製造しています。ゴールデンクロレラは、動物性タンパク質の生産と比較して1/36の水量で培養が可能で、CO2の排出量も少なくなり、タンパク質を豊富に含みながら自然を尊重した持続可能な食品生産に貢献しています。

AgroSustain
食品ロスを減らし、持続可能な食糧生産をの実現に向けて、 AgroSustain社は、生物学的・自然的な食物のサプライチェーンソリューションを提案しています。ヴォー州に拠点を置くスタートアップである同社は、農作物の鮮度を20日以上長持ちさせる天然成分由来の革新的なコーティング剤を考案し、農地やサプライチェーン過程で幅広い作物にダメージを与えるカビから保護しています。

Barto
ベルン州に位置するBarto社は、365FarmNet社と連携し、スイスの農業ニーズに合わせたデジタルファームマネージャーを提供しています。同社の技術を導入することで、農家は所有する農場に関するあらゆるデータをスマートフォンやパソコンを用いて一元管理が可能となり、農作業に関わる重要な事務負担を軽減し、大幅な時間短縮を図ることができます。

Edaphos
Edaphos社は、土壌汚染除去用の高性能真菌バイオマス生産に特化したアグリテック企業です。自然界では、菌類がほとんど全ての廃棄物を分解するため、汚染物質も浄化されます。同社の独自技術は、菌糸の機能解明と生体観察データを基に非常に高性能な菌類有効成分の大量生産を促し、循環型経済における様々な分野の問題に応えてることが可能です。

欧州特許庁(EPO)の2021年報告書によると、スイスは人口一人当たりの特許出願数が世界で最も多い国であり、フードテック関連技術は製薬分野に次いで2番目に多く出願されてることが明らかになりました。食品業界の革新を続ける国として、スイスは、より持続可能な食品システムを提唱し、フードテックとアグリテックのハブとしての地位を確立しています。スイスが農産物のハブとして急成長している理由については、こちらもご参照ください。

技術革新を進めながらも、自然とのつながり、食や伝統へのこだわりを重んじる日本の概念は、どこかスイスと通ずるものがあるのではないでしょうか。日本とスイスの技術の融合で、未来へ向けた食糧システムの構築の礎を築いてみませんか。アグリテックやフードテック分野でスイスの研究機関との共創や、スイスのスタートアップとの連携をご検討の際は、スイス・ビジネス・ハブまでお問い合わせください。

事業展開ハンドブック

事業拠点としてのスイスの優位点、スイスの投資環境、生産コスト、税制、インフラや新技術、ファイナンスや法務など、会社設立に必要な情報をまとめたハンドブック(全168ページ)を、ぜひご一読ください。

リンク

共有する