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スイス・クリプトバレーの今

早くから技術開発が進み、先駆的な法的枠組みも後押しとなり、世界に類のない発展が続くスイスのブロックチェーン業界。世界でも名の知れたクラスターとして「クリプトバレー」が生まれ、現在は960社がこの地に拠点を構えています。大きく成長したクラスター内の企業を様々な側面から支援する団体としてクリプトバレー協会が設立され、その事業開発責任者を務めるシェラズ・アハメド氏が、現在のクリプトバレーの動向を紹介します。「デジタルマネー」の領域をはるかに超えたブロックチェーン企業の活躍と最新情報をお届けいたします。ぜひご一読ください。

 

ツーク州を中心にスイス全土(リヒテンシュタインも含む)に広がるクリプトバレー
ツーク州を中心にスイス全土(リヒテンシュタインも含む)に広がるクリプトバレー

クリプトバレー(Crypto Valley)に拠点を置く企業の最近の傾向

新しい非金融ブロックチェーン・テクノロジーが市場に急速に浸透してきたここ数年で、ブロックチェーン企業を取り巻く状況は大きく進化しており、多様化も進んでいます。

ブロックチェーン・テクノロジーが単なる「デジタルマネー」をはるかに超える可能性を持ってい ることを周知および啓発することは、業界全体の主要な課題の1つとなっています。人間が構築してきた多くの制度や産業は、政治的な面や、人為的ミス、汚職や信頼性といった側面で諸々の問題を抱えており、それらを変革するには劇的な変化が必要です。ブロックチェーンを使用すると、そのような人間的な問題を排除し、各種の介入や人為的ミスを伴わずに「シス テム」を意図するままに実行可能です。

クリプトバレーでは、内外から起業家、エンジニア、投資家などが集結し、新しい爆発的な可能性を秘めたこの分野において革新的な試みが行われています。不動産、流通、再生可能エネ ルギーから輸送、デジタル識別、ガバナンス、社会福祉、健康管理、娯楽などに至るまで、さまざまな業界でブロックチェーンの技術が浸透していこうとしています。 下記のような非金融分野で業界をリードする数社も存在しています。(参考資料図1参照)

Utopia Music
Utopia Music社は、ビッグデータを活用して世界の音楽業界の収益増大、コスト削減、支払サイクルの短縮、インサイトの向上を実現しながら、音楽と技術で創造性と喜びを育めるエコシステムの創出に取り組む技術系企業です。評価額: $154,000,000

4ARTechnologies
4ARTechnologies社は、アートの世界に新たなデジタル規格の導入を試みる企業です。同社はブロックチェーンと特許取得済みの拡張現実/認証テク ノロジーを融合し、芸術に関わるすべての人々が高い透明性と安全性を確保しながら効率的に参加できる環境の提供を目指しています。同社の規格を活用すれば、スマートフォンのカメラを使用してアートワークの微細な構造を読み取り、デジタル・フィンガープリントに変換できます。このフィンガープリントは、アートワークの来歴と共に「生体認証パスポート」としてブロックチェーンで保護されます。アートワークが保存されると、安全かつ一意にデジタル証明書が割り当てられます。評価額:$500,000,000

Modum
modum.ioのセンサーデバイスを使用すると、物理的な製品の輸送時における環境条件を記録できます。所有権変更の発生時には、収集されたデータがブロックチェーン内の特定のスマートコントラクトと照合され、取引が発送者と顧客または規制当局が設定したすべての基準を満たしているか、そして、さまざまな措置が実行されているかの検証が可能です。modum.ioでは、近年厳格化されたEUにおけるヒト用医療製品の輸送規制の要件にも適合する効率的なシステムを提供する最初の製品を発表しています。評価額:$15,000,000

クリプトバレートップ50社に関する2021年レポートの主要情報 

● クリプトバレートップ50社の評価額は合計で2549億ドル。
●トップ50社の調達額は37億ドル。
● クリプトバレーの企業総数は960社。
● スイスおよびリヒテンシュタインを含むクリプトバレーのブロックチェーン企業による雇用 総数は5184人に増加。
● 暗号化市場は2021年初めに劇的な拡大を続け、クリプトバレートップ50社の評価額は前年の報告の375億ドルから2549億ドルに達し、680%の増加。
● クリプトバレーのユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上に達したプロジェクト)は、 前年の6社から11社に増加。内訳:Ethereum(1572億ドル)、Cardano (406億ドル)、Polkadot(293億ドル)、Aave(39億ドル)、Cosmos(38億ドル)、Solana(33億ドル)、Tezos(26億ドル)、Dfinity(20億ドル)、Near(11億ドル)、Nexo(11億ドル)など。

クリプトバレーのスタートアップと大企業の連携

近年、ブロックチェーンのスタートアップエコシステムから生まれるさまざまなプロジェクトと大企業の間では多様な連携が行われています。多くの銀行、技術系企業、および業界リーダーは、独自のブロックチェーン・テクノロジー部門を社内に展開したり、ブロックチェーン業界の先進企業と提携したりと、改革を進めています。VISA、IBM、Facebook、Appleなどの企業はその一例です。クリプトバレー協会の役割として、伝統的な業界と新興の技術系スタートアップ企業の連携を促すことが業務の大きな部分を占めています。 また、標準的なブロックチェーン・テクノロジーと、分散型アプリケーションを技術的に実装可能なイーサリアム(Ethereum)やカルダノ(Cardano)といったブロックチェーンプロトコルの差別化を図ることも重要です。あらゆる業界や業種が「協力」することで同プロトコル上に革新的な技術を構築することが可能です。(参考資料図2参照)

事例1: HyperLedger
HyperLedgerは、ブロックチェーン・テクノロジーの発展を促進するために設立された企業間オープンソースのパートナーシップです。Hyperledgerには、アクセンチュア、デロイト、富士通、 日立、ファーウェイ、インテル、IBM、モスクワ証券取引所、SAP、サムスン SDS、Xiaomi、シスコなどを含む250以上のメンバーが加盟しています。

事例2: Ethereum
Ethereumは、Ethereum Enterprise Alliance(EEA)という組織が支援する分散型プロトコルプロジェクトであり、アクセンチュア、BlockApps、BNY Mellon、CMEグループ、ConsenSys、 IC3、インテル、JPモルガン、マイクロソフト、Nuco、サンタンデール銀行などの多くの企業や 組織が参加しています。2017年の設立以来、この組織には三菱UFJ銀行、DTCC、デロイト、サムスン SDS、インフォシス、およびカナダ・ナショナル銀行などの企業が参加しました。EEAの重要な目標は、Ethereum開発企業とFortune 500企業、スタートアップ企業、政府機関との連携を図ることです。

日本との連携

現状で最大の連携の1つは、2019年にInternational Digital Asset Exchange Association (IDAXA)との間で覚書(MoU)を締結したことです。この覚書の目標は、世界中の暗号資産サービスプロバイダー(VASP)業界に統一見解を提供することにあり、クリプトバレー協会と日本ブロックチェーン協会(JBA)はいずれも、IDAXAおよび国際的な規約に加盟しています。 IDAXAは、V20仮想通貨サミットでのMoUの締結を基に設立されました。V20サミットはG20大阪サミットと並行して開催され、政策立案者や規制当局との会議のために暗号資産サービ スプロバイダー(VASP)が招集されました。ここでは、金融活動作業部会(FATF)の新しい勧 告案の順守に向け、明確なロードマップが策定されました。FATFガイドラインの改訂に伴い、 VASPは今後、特にAMLデューデリジェンス対策向けの監視ソリューションや、交換または取引プラットフォームなどのサービスの提供が必要となります。

 

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シェラズ・アハメド
クリプトバレー協会 事業開発責任者 
ランカスター大学・ポンティフィシア・コミヤス・ICADE大学を卒業。クリプトバレー協会の事業開発責任者として、グローバルなブロックチェーンのエコシステムの成長・コラボレーションを推進。ジュネーブ大学、シンクタンクのホラシスなど講演多数。イノベーションに関する洞察力や経験から、数百のスタートアップに助言する。英国生まれ。

 

 

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