アスリートのパフォーマンス向上や観客の体験向上をはじめ、スポーツ団体の効率化などを様々なスポーツにおける課題解決を目的のために活用される技術は総称して「スポーツテック」と呼ばれています。ウェアラブルデバイス、データ分析、人工知能、仮想現実・拡張現実など、幅広い技術が含まれています。
現在、スポーツテックは、サッカー、バスケットボール、自転車、ゴルフなど、さまざまなスポーツに応用され、大きな成長を遂げています。技術発展により、アスリートのトレーニング、競技、怪我から復帰、スポーツ関連組織の運営方法などに革命をもたらしています。このユニークなエコシステムと国際的なスポーツ環境を背景により、スイスはスポーツテック企業にとって最適な立地としても知られています。
ヴォー州・ローザンヌに本部を置く国際オリンピック委員会をはじめ、同州だけでも約60の国際スポーツ連盟や関連組織が拠点を置き、「スポーツ界のシリコンバレー」とも呼ばれています。
センサとソフトウェアを内蔵し、スポーツにおけるアクティビティをリアルタイムでモニタリングすることで脳への衝撃を予防するヘルメットを開発したBearmind社は、ローザンヌに立地するEPFUイノベーションパークを本拠地としています。また、ヴァレー州に本社を置くMyotest社は、生体力学的指標の分析に特化ソフトウェアと携帯機器を専門に扱っています。ヌーシャテル州に立地するCSEMは、ヘルスケア、ウェルネス、スポーツの分野で活用可能なセンサ技術や非侵襲的モニタリングソリューションの研究が盛んです。Darftfish社(フリブール州)、Pomoca社(ヴォー州)、Timeon社(ジュネーブ州)、Bodygee社(ベルン州)など、スイス西部には多くのスポーツテック企業が存在しています。
地域のエコシステム活性化のため、協業やオープンイノベーションを促すさまざまな取り組みが行われ、海外からも広くプロジェクトや直接投資を誘致しています。また、連邦政府、国際オリンピック委員会、ヴォー州、ローザンヌ市が共同で設立した「ThinkSport」は、幅広いスポーツ団体、企業、機関が集まり、交流やコラボレーション、共創やイノベーションを促進するためのネットワークの場を提供しています。
レマン湖周辺に立ち並ぶ9つの学術機関を結ぶ学術ネットワーク「Smart Move」の取り組みにより、スポーツ関連の研究において、この地域で拡大する将来性が更に協調されています。Smart Moveはスポーツ分野におけるノウハウや専門知識を企業や研究機関に提供し、分野横断的なコラボレーションやプロジェクトを奨励するものです。
さらに、ヴァレー州においては「SpArk」プロジェクトや「S.M.A.R.T. Confluence」エコシステムなど、同地域特有の国際的なスポーツ環境と相性も良く、同地で行われる革新的な研究とスポーツテック開発に恵まれた場所となっています。このように、スイス西部にはスポーツ団体、学術機関、スポーツテック企業が集積し、同分野のイノベーションの拠点と成長を続けています。
日本はあらゆるスポーツ競技で頭角を現す国のひとつです。また、世界中で普及が進んでいる日本特有の競技も数多くあり、今後のスポーツテック展開も大いなる可能性を秘めています。スポーツにビジネスポテンシャル見出せる技術と市場基盤を持ち合わせる日本企業こそ、グローバル水準でのスポーツテックエコシステムを大いに活用できるのではないでしょうか。